風景のメカニズム2

昨年に引き続き、研究成果の展示をDESIGNART TOKYO 2024の一環として西武渋谷店7F催事場にて行いました。
https://designart.jp/designarttokyo2024/exhibitions/7816/

店舗型ロボットと言えるような自動運転車が普及すれば、駐車場や道路にそれらを並べ商店街やマーケットを一時的に作り出すことができます。スマートシティに現れるそうしたロボット達が、天気や人流や場所の空き状況に応じて色々な街を巡りワクワクする物理環境を生成して提供するサービスを「時空間サービス」と名付け、新たな場所の作り方を作り出そうとしています。

変形能力と移動能力を備えた家具型ロボット達とHMDやプロジェクタの映像を組み合わせる遊具型ロボット達が「公園」や「遊園地」といった時空間サービスを作り出す様子を展示しました。

全体の風景
(写真撮影:ナカサアンドパートナーズ)
遊具型ロボット達(左上下)と家具型ロボット達(右上下)
(写真撮影:ナカサアンドパートナーズ)

自動運転車や配膳ロボットなど、移動能力を備えた機械知能が私達の身の回りに存在するようになりました。その知能や能力がシンプルで限定的だとしても、ある量を越えて風景の一部となった時、私たちの環境はどのようなものにいるのでしょうか。そうしたロボット達はどのような都市の風景を作りだすでしょうか。私たちはそうしたロボット達とどのように付き合っていくのでしょうか。この展示がそうした風景を想像する契機になればと思います。

会場の設計と施工には石井大吾デザイン室一級建築士事務所と水内貴英美術製作室にご協力いただきました。家具型ロボット・遊具型ロボットのデザインと制作にはリプルデザインラボ、kokkok、阪本真にご協力をいただきました。会場でも流した映像の制作にはACTUAL inc., SHINSEKI INC.のご協力をいただきました。

また会場では書籍「スマートシティとキノコとブッダ」の出版記念トークを行いました。展示会場の向かいは紀伊国屋書店・渋谷店さんでしたので、出版社ビー・エヌ・エヌと紀伊国屋書店のご協力のもと、展示の期間中に関連するビー・エヌ・エヌの書籍を並べたコーナーを特別に設えていただきました。
https://peatix.com/event/4158543/view


展示にご協力いただきました皆さま、展示にお越しいただきました皆さま、どうもありがとうございました。

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IEEE Spectrum Video-Fridayに家具型ロボットFurnituroidsが掲載

ロボットの国際会議の中でメジャーな会議のひとつであるIEEE ICRAが40周年を迎えたということで、ICRA@40という国際会議がロッテルダムで行われました。

そこではロボット研究のレジェンドやホットな研究を行っている研究者達のキーノートセッションをメインにしつつ様々な研究のポスター発表が行われました。そのひとつとして研究している家具型ロボットのデザインアプローチについて
“Embracing Ambiguity in Furniture Robot Design”と題して発表をしてきました。

そのビデオがIEEEの機関誌であるSpectrumのWebサイトにVideo-Fridayというコーナーで掲載されました(ページの最後です)。
https://spectrum.ieee.org/video-friday-icra40

Video FridayはIEEEが毎週金曜日に公開している特集の一部で、ロボット工学や関連技術に関するビデオを紹介するものです。最新のロボット技術や研究開発の成果のビデオを紹介することで、専門家だけでなく一般の読者に最新の情報を提供することを目的としているものです。この特集ページではICRA@40で発表されたビデオのいくつかがピックアップされています。


This paper explores the design and implementation of Furnituroids, shape-changing mobile furniture robots that embrace ambiguity to offer multiple and dynamic affordances for both individual and social behaviors.


ときちんとアブストラクトの文章を引用してもらえたのも嬉しい限りです。

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「スマートシティとキノコとブッダ」書籍化・発売

これからAIやロボットが道具としてだけでなく他者や他種として私たちの環境を構成しようとする中で、新しい道具と新しい環境が人類をどのように変化させどのような身体性とどのような知性を引き出すのか。こうした問題意識を下に、「スマートシティとキノコとブッダ」と名付けたプロジェクトとして、様々な分野の方々との対話をnoteに公開してきました。

そしてこの対話をベースにした書籍を出版社BNNさんから出版することができました。
中西泰人, 本江正茂, 石川初 スマートシティとキノコとブッダ 人間中心「ではない」デザインの思考法 ビー・エヌ・エヌ (2024/9/19)

書籍化にあたっては、思考のビークルとしてのさまざまな方々との対話が、私達をどのような場所へ導いてくれたのか?を改めて考えたいと思いました。

書籍は、
・理論編 人間中心「ではない」デザインの思考法 についての論説
・対話編 公開済みの8つの対話+建築家・津川恵理さんとの対話を追加
・実例編 無分別智が発揮されていると著者らが考えているデザインの実例
・練習編 無分別智を身につけるための練習課題
・まとめ
という構成になっています。書籍化にあたって理論編、津川さんとの対話、実例編、練習編を追加し、公開済みの対話の2倍ほどのボリュームになりました。

AIやロボットと付き合う中で、人間は人間にしかない創造性を発揮すべきだ、と様々な方が言われています。そうした中でも私達は、具体的にはどのような創造性を発揮すべきなのか?その創造性を身に付けるにはどうすれば良いのか?という問いに対して、ひとつの答えを示したいと考えました。

私達の答えは、東洋/日本的な知のあり方である「無分別智」を身につけ、
・今ここ、 目の前にあるモノやコトの価値を新たに見出し(発見的)
・その価値を別のところへ結びつけ、 さらなる価値を生み出す(開眼的)
という「人間中心ではない」創造のあり方を発揮するというものでした。

その問いに答えるにあたりヒントをくれたのはやはり「キノコ」と「ブッダ」でした。ぜひ書籍を手にとり、新しい縁起の一つにして頂ければ幸いです。


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UnityとROS 2で実践するロボットプログラミング

これまで研究を進める中で培ってきたUnityとROS 2を組み合わせて新しいアイデアを実装するための知識を書籍として出版することになりました。
発売日は5月22日ですが、アマゾンで予約された方のお手元にはもう届いているようです。

UnityとROS 2で実践するロボットプログラミング – ロボットUI/UXの拡張
奥谷 哲郎, 田井 普, 髙木 健太, 中西 泰人

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学部2年・宮下晃有君が情報処理学会学生奨励賞を受賞

学部2年の宮下晃有君による情報処理学会HCI研究会での発表が学生奨励賞を受賞しました。

宮下晃有, 中西泰人, FrameLight: 変形能力と移動能力を備えた家具型ロボットの印象を定める形状変化と動きの調査, 情報処理学会研究報告2023-HCI-207 (2024/03).

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Furnituroids on YouTube

Furnituroidと名付けた変形能力と移動能力を備えた家具型ロボット達が、多義的で動的な空間を作り出す様子を動画にしてもらいました。

SFCでの撮影を取り仕切ってくれたのはSFCのOBでもあるActualの辻勇樹さんです。撮影をしていただいたShinsekiの山地さんはキャンパスの美しさを切り取りつつFurnituroidの魅力を引き出してくれました。

Actualが開発している360度映像のブラウザWHERENESSでもこの映像をみていただくことができます。人間だけでなく、家具型ロボット達の視点、そしてそれらを包んでいる環境の視点からも、作り出された空間を視覚的に体験いただけます。
https://www.actu-al.co/works/mechanism-of-landscapes

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風景のメカニズム

変形能力と移動能力を備えた家具型ロボット達が多義的で動的な空間を作り出す様子を体験してもらうために、デザインとアートのイベントDESIGNART TOKYO 2023の一環として、研究成果の展示を西武渋谷店7階催事場にて行いました。
https://designart.jp/designarttokyo2023/exhibitions/3798/

いつもはお中元コーナーや北海道物産展などが催される空間に、家具型ロボット達が現れて公園のような場所を作り出しました。

家具でありながらロボットである。ロボットでもありながら家具でもある。それ故、ただ家具であるだけではなく、またただロボットであるだけでもない。そうした矛盾した多義的な存在が環境の要素となると、そこでの行為の可能性を人間側が読み取る必要が出てきます。座っていいのか、座らない方がいいのか。何か置いて良いのか、置かない方がいいのか。そばに寄っていいのか、寄らない方が良いのか。その機能や意味を合理的に理解できる道具というよりは、どういう行為の可能性があるかを自身で判断する無記的な素材や地形のような存在です。

一般的なロボット達が作り出す風景は無機質で機械的なものかもしれませんが、私たちが設計・開発した家具型ロボット達が作り出す風景はどのようなものか。その様子を私たち自身も身体的に体験できたように思いました。

展示の企画はActualの皆さんに協力いただきました。お越しいただいた皆さま、どうもありがとうございました。


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Boomshin

遭遇型触覚ディスプレイを用いて、空間内の物体の触覚提示の有無を時間的に切り替えるBoomshinを制作しました。触覚提示がある物体・ない物体をそれぞれ実体・分身と名付け、両者の時間的な出現パターンを独立変数とし、ゲーム体験の印象の変化を評価しました。その結果、実体あるいは分身のみの場合よりも両者が混在している場合のほうが、ゲームにおける驚きおよび満足感が高くなることが明らかになりました。また、体験中に実体の出現頻度を急激に変化させることで、より大きな印象変化を提示可能であることが明らかになりました。

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AmplifiedCoaster

ジェットコースター体験のVR映像を表示するヘッドマウントディスプレイと簡易的なモーションプラットフォームとしての電動車椅子に、電動車椅子をベースに制作した移動する小型の坂道を組み合わせることで、
・持続的な上昇感覚
・持続的な効果感覚
・平地から上昇、下降から平地への移動
する体験を擬似的に提示できるようにしました。
現在は上昇と下降を繰り返す体験を提示できるよう、研究を進めています。

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AmplifiedCarousel

メリーゴーラウンドのVR体験を提供するにあたり、10cm程度の上下動だけをするモーションプラットフォームと、動的な錯視映像を床面に敷き詰めた映像をHMDに提示することで、実際の上下動の約3倍程度の上下動を体感させることができるようになりました。錯視の種類や体勢、VR映像からMR映像の種類などによってどの程度上下動の感覚が変わってくるかを研究しています。

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