2012-2013 ME120: History and Philosophy of Design

ME120の授業を行うBarry Katzさんは、スタンフォードで教鞭を取るだけでなく、IDEOのフェローCalifornia College of the Artsの教授を務めておられ、デザイン史やデザイン理論を専門とされています。
Katzさんはこの1月に六本木ヒルズで開催された第2回トポス会議で講演をされ、その交流会でお話をさせて頂きました。デザインの歴史はひと通り分かっているつもりでしたが、改めて勉強するとても良い機会に巡り会うことができました。

この授業では、産業革命および大量生産の普及に伴って変化したアート、建築、プロダクトの歴史、そしてそれらと社会や文化との関連について、示唆に富んだ話をウィットに富んだ語り口でレクチャーをされていました。

いちばん印象に残ったのは「デザインの歴史とはモノの歴史ではなく、アイデアの歴史である」とおっしゃっていたことでした。また授業のタイトルが単にHistory of Designではなく、History of Philosophy of Designとなっています。
IDEOのKatzさんの紹介ページでも

Barry believes that there is no design problem that does not have its roots in history, and his contributions to IDEO’s project work have been to make that history relevant.

と書かれています。「(歴史や文化や社会や人間に対する)哲学が伴わないアイデアは”デザイン”ではない」とKatzさんは考えておられるのではないでしょうか。
シリコンバレーとコンピュータの歴史を紹介する回でスティーブ・ジョブズだけでなくダグラス・エンゲルバートやアラン・ケイを紹介したこと、最終回の授業の終わりでエットーレ・ソットサスの

Design is a way of discussing life. It is a way of discussing society, politics, eroticism, food, and even design.

という言葉を紹介したことは、その表れだと思います。

“(産業)インダストリアルデザイン”自体がうまれたことが産業や社会と大きな関連を持っているわけですから、産業や社会の変化と共にデザイナやエンジニアにも新しい職能が求められます。モダンデザインの歴史は”Machine Age”における哲学とアイデアの歴史と言えますが、知的なマシンがネットワークされた”New Machine Age”におけるデザインとは何か?という大きな歴史観を持って自分なりの哲学を築くことが必要です。肝に銘じたいです。

Barry M. Katz, Technology and Culture: A Historical Romance (Portable Stanford)

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