ME115A, ME115B, ME115Cと3セメスター続く115シリーズは,ME101のfamily classとも言える授業シリーズで,ME101で学んだプロセスを3つのパートに分解しそれぞれのパートにかけるウェイトを変えてデザインを実践するプロジェクトベースの授業です.
秋学期のME115A: Introduction to Human Values in DesignはDavid Kellyがメインの講師を務め,フィールドワークに基づいたEmpathy+Problem Definitionに重きをおいていました.
冬学期のME115B: Product Design Methodsの目的は,コンセプトと機能性と審美性を兼ね備えた製品を作り出すデザイナの役割にフォーカスしたデザインプロセスを実践しスキルアップすると共にその理解を深めることです.
3人の講師でグループティーチングを行い,メインの講師はDesign Like Apple: Seven Principles For Creating Insanely Great Products, Services, and Experiencesの著者でデザインファームLUNARのPresidentであるJohn Edsonです.そして,HTCのデザインディレクターDaniel Hundt,IDEOに勤めた後Curiosity Atlasを立ち上げたGretchen Wustrackという豪華な顔ぶれの3人が一緒に週に2回の授業を行います.
個人的に興味深かったのは,課題:Design Projectの設定と,それらが進行するとともにと共に学生達がデザイナに必要な能力を身につけられるよう授業のプロセスがデザインされていることでした.
- DP0 立方体のスタイロフォームを削って塗装+磨いてツルツルのBeanを作る.手を動かしてイメージを形にするスキルの大事さを学ぶ.
- DP1 Imitation (Pen Project):有名なデザイナがペンを作ったら?という想定をしてペンをデザインする.模倣/人まねをするべく,そのデザイナのデザインの線をきちんと観察することになる.
- DP2 Form Language (Tabletop Suite):どこかのブランドのデザイナになったという想定をしてテーブルウェアをデザインする.そのブランドが新しく送り出すシリーズを考えた上でプロダクトを1つデザインする.製品が作られるコンテクストと使われるコンテクストを踏まえた上でオリジナリティを出しつつも既存の製品のコンテクストに沿うよう,より広範囲なモノとコトを観察することになる.
- DP3 Designer’s Voice (Lamp Project):テーブルランプをデザインする.想定した価格とターゲットユーザの属性を踏まえつつ,様々なモノやコトからインスピレーションを得てアイデアを形に落とし込む.これまでの授業でのトレーニングの成果を自由に発揮することになる.
DP0, DP1, DP2, DP3それぞれ,調査/観察→スケッチ→プロトタイプ→デザインと必要な過程をきちんと踏まえるよう授業が組み立てられています.宿題が細かく出され,3人の講師と3人のTAが分かれて学生達にコメントをして行きます.デザインには正解がないために人によって好みが分かれることがあるので,毎回違った人からコメントが貰えるのはとても良いことだと思います.TAはDesign Programの修士課程の学生ですが,既にデザイナとしての実務経験がある人ばかりです.それにしても3人のプロ+3人のプロ予備軍で50人ほどの学生を教えるという環境は羨ましい限りです.
ME101とME115Aも授業を聴講していましたが,1年の間に学生達が徐々にスキルアップしていく様子を見ることができました.アメリカの各州の優等生が集まるスタンフォードでは,努力家の学生達がカルフォルニアの太陽の下で陽気にハードワークしています.ME 115C: Design and Business Factorでは製品のコストの計算やビジネスの企画の提案も行うとのこと.いろいろな授業で1万時間ルールのことが話題に上がりますが,これだけ練習を重ねていけばデザインシンキングは着実に血となり肉となると思います.
Many thanks to John, Daniel, Gretchen and all guys in the class!