2013-2014 Winter semester (1) ME115B

ME115A, ME115B, ME115Cと3セメスター続く115シリーズは,ME101のfamily classとも言える授業シリーズで,ME101で学んだプロセスを3つのパートに分解しそれぞれのパートにかけるウェイトを変えてデザインを実践するプロジェクトベースの授業です.

秋学期のME115A: Introduction to Human Values in DesignはDavid Kellyがメインの講師を務め,フィールドワークに基づいたEmpathy+Problem Definitionに重きをおいていました.
冬学期のME115B: Product Design Methodsの目的は,コンセプトと機能性と審美性を兼ね備えた製品を作り出すデザイナの役割にフォーカスしたデザインプロセスを実践しスキルアップすると共にその理解を深めることです.

3人の講師でグループティーチングを行い,メインの講師はDesign Like Apple: Seven Principles For Creating Insanely Great Products, Services, and Experiencesの著者でデザインファームLUNARのPresidentであるJohn Edsonです.そして,HTCのデザインディレクターDaniel Hundt,IDEOに勤めた後Curiosity Atlasを立ち上げたGretchen Wustrackという豪華な顔ぶれの3人が一緒に週に2回の授業を行います.

個人的に興味深かったのは,課題:Design Projectの設定と,それらが進行するとともにと共に学生達がデザイナに必要な能力を身につけられるよう授業のプロセスがデザインされていることでした.

  • DP0 立方体のスタイロフォームを削って塗装+磨いてツルツルのBeanを作る.手を動かしてイメージを形にするスキルの大事さを学ぶ.
  • DP1 Imitation (Pen Project):有名なデザイナがペンを作ったら?という想定をしてペンをデザインする.模倣/人まねをするべく,そのデザイナのデザインの線をきちんと観察することになる.
  • DP2 Form Language (Tabletop Suite):どこかのブランドのデザイナになったという想定をしてテーブルウェアをデザインする.そのブランドが新しく送り出すシリーズを考えた上でプロダクトを1つデザインする.製品が作られるコンテクストと使われるコンテクストを踏まえた上でオリジナリティを出しつつも既存の製品のコンテクストに沿うよう,より広範囲なモノとコトを観察することになる.
  • DP3 Designer’s Voice (Lamp Project):テーブルランプをデザインする.想定した価格とターゲットユーザの属性を踏まえつつ,様々なモノやコトからインスピレーションを得てアイデアを形に落とし込む.これまでの授業でのトレーニングの成果を自由に発揮することになる.

DP0, DP1, DP2, DP3それぞれ,調査/観察→スケッチ→プロトタイプ→デザインと必要な過程をきちんと踏まえるよう授業が組み立てられています.宿題が細かく出され,3人の講師と3人のTAが分かれて学生達にコメントをして行きます.デザインには正解がないために人によって好みが分かれることがあるので,毎回違った人からコメントが貰えるのはとても良いことだと思います.TAはDesign Programの修士課程の学生ですが,既にデザイナとしての実務経験がある人ばかりです.それにしても3人のプロ+3人のプロ予備軍で50人ほどの学生を教えるという環境は羨ましい限りです.

ME101とME115Aも授業を聴講していましたが,1年の間に学生達が徐々にスキルアップしていく様子を見ることができました.アメリカの各州の優等生が集まるスタンフォードでは,努力家の学生達がカルフォルニアの太陽の下で陽気にハードワークしています.ME 115C: Design and Business Factorでは製品のコストの計算やビジネスの企画の提案も行うとのこと.いろいろな授業で1万時間ルールのことが話題に上がりますが,これだけ練習を重ねていけばデザインシンキングは着実に血となり肉となると思います.

Many thanks to John, Daniel, Gretchen and all guys in the class!

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2013-2014 Autumn semester (2)

授業の発表会としては
ME218A: Smart Product Design Fundamentals
ME20N
ME203: Design and Manufacturing
を見に行きました.

ME218いわゆるメカトロの授業ですが,A,B,Cと3セメスター毎にレベルアップしていくようです.アーケードゲームを作るというのが最終課題ですが,Aとはいえかなりの完成度です.使っているセンサとアクチュエータはほぼ共通なので,基本的な動作をマスターした後にそれらの新しい組み合わせを考えるという進め方のようですが,最終課題はなんと2週間で仕上げたとのこと.レーザーカッター使っているのも当たり前だしきちんと塗装してるのも当たり前.4人組で2週間でこれだけのものを作るには,アイデア+手を動かすスキル(メカ+エレクトロニクス+加工)に加えてプロジェクトマネジメントが出来ないと,これだけのものは作れないでしょう(少し衝撃を覚えました…)

ME20Nは正規の授業ではなく,CDRのCHARM LabのM1の学生のセレクションとのこと.Labのメンバーが開発したArduinoベースのボードを使ってセンサとアクチュエータを動かしてHaptic feedbakのある何かを作るという課題でした.フォースフィードバックがあるテニスゲームが秀逸でした.こちらは2人組で2週間のプロジェクト(さらに衝撃を覚えました…).

ME203は工作機械を自分で使いこなし製造のプロセスを学ぶ授業です.受講者それぞれがモノを作っている感じですが,きちんとUser testingを繰り返してプロトタイピングを繰り返している人もいたり,逆に素材と何度も対話を重ねることでカタチを作っている人もいました.その繰返しの回数が多い人ほど完成度が高かったように思います.

他にも,Wendyと一緒にExploratoriumであった1965-71に活躍したメディアアートグループE.A.Tのシンポジウムに行きました.日本から来られた岡崎乾二郎さんと色々お話できたりE.A.Tの方と同じテーブルで食事ができ,とても恐縮でした…
12月には同じCDRでVisiting Scholarをしているソニーの田中章愛さんにAutoDeskの工房訪問を企画していただいて参加しました.そこでは学生時代に良く読んでいたMacintosh Developer’s Journalで記事を書かれていたBasukeさんにお会いでき堅い握手を交わしました(涙).

と,刺激に溢れたAutumun Semesterでした.残るWinter Semesterも色々と楽しみたいと思います.

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2013-2014 Autumn semester (1)

新年明けましておめでとうございます.Winter semesterが始りました.Autumn semesterは自分の研究を進めるために授業の聴講はあまりしていなかったのですが,レクチャーや発表会等などの内容を少し紹介したいと思います.


夏に作っていたProcessinglueのデモをCasey Reasに見てもらうためにLAに行ってきました.メディアアーティスト->建築家の杉原聡さんがモーフォシス在籍時にデザインしたファサードやSCI-Arcを案内してもらいつつ,Caseyとも仲が良いので一緒にUCLAに行きキャンパスも案内してもらいました.イームズのケーススタディハウスも見ることができ,色々な刺激を受けたLAでした.

MIT->RISDのJohn Maedaのレクチャーがありました.Computational Designが当たり前になった今,デザインのバランスとしてACTIONS(PHYSICAL), EMOTIONS(COGNITIVE), RELATIONS(ORGANIZATIONAL)からなる三角形を描き,大学によってそのポジションが異なる,という図でその状況を解説しました.とても分かりやすく,自分(達)の立ち位置を考える良い地図だと思います.また彼の著書
リーダーシップをデザインする: 未来に向けて舵をとる方法
では,新しい時代のリーダは一つの山を上ったらその山から飛び降りてまた新しい山に登るのだ,と述べていました.Johnは12月にRISDの学長を辞めてメンロパークのベンチャーキャピタルにjoinしました.こうあるべきという姿を自ら実践したということですね.

d.schoolのDavid Kellyの近著
Creative Confidence: Unleashing the Creative Potential Within Us All の出版をお祝いするパーティがあったりしつつ(都合が付かずで参加できずでしたが),d.schoolの授業の発表会を一つ見に行きました.

さまざまな分野の大学院生がチームを作り「未来の大学」の姿をプロトタイプしていました.びっくりするようなアイデアではありませんでしたが,スタンフォードのビジネススクールを卒業した起業家お2人の著書
伊佐山元 シリコンバレー流 世界最先端の働き方
水島淳 スタンフォードの教え「ビー・ユアセルフ」
でもd.schoolについて言及されています.お2人とも東大法学部を卒業とのことですが,法学部卒の僕の友人から「デザイン」という言葉が出てくるシーンを想像しづらいので,あらゆる分野の人がデザインとプロトタイピングの重要性を知っているということはシリコンバレーの大きな強みであることは間違いないでしょう.
(続く)

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スポーツと働き方とお国柄

今いるスタンフォード大学はスポーツの強豪でもありますが,立派なスタジアムや体育館があり,アメリカンフットボールバスケットボールを見に行ったりしています.

HCIの研究の一つとしてスポーツを対象にした研究をスタートするべく,色々と調べた内容をhttp://mediasports2020.wordpress.comにまとめて公開しています.

バレーボール,バスケットボール,アメリカンフットボールは,アメリカで考案されたスポーツですが,これらの共通点に先日ふと気が付きました.

  • 作戦タイムが頻繁に取ることができ,やるべきことが言語化され共有される
  • ポジションによる分業がクリアであり,また何度も選手交代ができる

これはアメリカでの働き方とも近いのではないでしょうか.
あまりにも一般化してしまっているかもしれませんが,Head Quarterが重要な決定を行い,職能やJob Descriptionがクリアであり,頻繁に転職があるが人材がモジュール化されていて入れ替わりが前提となっている.こうした働き方とメジャーなスポーツとの共通点は,お国柄を表しているだろうと思います.

アメリカを起源とするスポーツに慣れ親しんだ日本人はアメリカで働きやすいかもしれませんし,日本を起源とするスポーツに慣れ親しんでいる他の国の人も日本で働きやすいかもしれません.

日本が起源であるスポーツには,相撲,柔道,剣道,空手,合気道がまず思い浮かびます.これらは運動競技ではありますが,剣道について全日本剣道連盟が「稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」です」と述べているような所も特徴でしょうか.他には,軟式テニス,軟式野球、競輪,駅伝なども日本発祥のスポーツです。

日本でのスポーツの意味あいが体育に近く,「元となった英語ではスポーツの範疇に含まれるものでも、日本人が想像するスポーツの印象からは外れるものが多く存在する。」(wikipedia 日本のスポーツ)というくだりは,なるほどと思いました.

」は奥が深いものを究めて行こうとする精神性を表す漢字だと思いますが,日本の企業の中に長時間働いている人がエラいという感じがあるのは働くことも修行のような「道」に近い感覚があるのかもしれません.

ちょっとした雑感でした.

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Processinglue : Virtual Camera

Processinglueには,Processingを出力できる仮想ディスプレイだけでなく,Processingの入力として使うことができる仮想カメラもあります.

Processingでカメラを使う際には processing.video.Captureクラスを使いますが,仮想カメラはCaptureクラスのサブクラスとして実装しているので,同じようにPAppletから扱うことができます.

その一例としてPerfume Official Global Websiteで公開されているPerfumeのモーションデータを再生するProcessingのサンプルを拡張しました.Perfumeの前に仮想カメラを置き,その画像をオプティカルフローを出力するProcessingに渡し,その出力をPerfumeの後ろに置いた大きなディスプレイに出力しました.

右のウィンドウがシミュレーションをするProcessing,左上のウィンドウが画像処理を行っているProcessing,左下のウィンドウが仮想カメラの画像です.

Capture and Display Test0

シミュレーションを行うPAppletの中では下記のような手順でインタンスを生成します.

capture = new P4PCapture(this,320,240);//仮想カメラのインスタンスをnew
opticalflow opt = new opticalflow();//オプティカルフローのPAppletをnew
opt.setCapture(capture);//仮想カメラをオプティカルフローのPAppletに渡す
display = new P4PDisplay(this, 1600, 1200, opt, 320, 240, true);//オプティカルフローのPAppletを引数にして仮想ディスプレイのインスタンスをnew

オプティカルフローを計算するProcessingはOpenProcessingで公開されているものを使いました.そのソースの中に画像を反転する/しないを決めるパラメータがありますが,反転せずに出力してみました.

Capture and Display Test1

画像処理を使ってビデオエフェクトをかける時には,画像が入れ子になっていくビデオフィードバックがかからないようカメラにフィルタをかけることがあります.ビデオフィードバックがかからないようシミュレーションしてみました.

Capture and Display Test2

フィルタをかける/かけないを仮想空間でも可能にするために,PAppletがimplementするインタフェース:Draw2PGraphics3Dを定義してあります.
カメラには写したくない+3D空間の中に表示するものはdraw()の中でhoge.draw();等として描画をします.
カメラに写したい+3D空間の中にも表示したいものはdraw2PGraphics3D()の中でfuga.draw();などとしておき,draw()の中でdraw2PGraphics3D(this);と呼び出すようにしています.
少しややこしい気もするので,写さないオブジェクト/写すオブジェクトをリストで管理しても良いかな…とも思うのですが,PAppletのサブクラスを作って隠蔽することが分かりにくさを生む場合もあると考え,今はこうした実装にしています.
(良い実装の方針があったらぜひ教えて下さい)

Cpatureクラスを使って画像を処理するPAppletは少しだけ拡張を行います.

public boolean realDeployment = false;

という変数と下記のようなメソッドを追加します.

public void setCapture(Capture capture){ // added for P4P
this.video = capture;
}

setup()の中で

if(realDeployment) { // added for P4P
video = new Capture(this, wscreen, hscreen, fps);
video.start();
}

とすることで,シミュレーションの際にはリアルなカメラをnewしないでおき,シミュレーションのコードでnewした仮想カメラをsetCapture(capture);します.

draw()の中で仮想カメラ/リアルカメラからの画像を読み込みますが,

if(realDeployment == true)
video.read();
else
video.loadPixels();

として仮想カメラ/リアルカメラを使い分けています.他の部分は元のソースコードと同じです.こうした実装をすることで

  • 仮想カメラからの入力を仮想ディスプレイに出力
  • リアルカメラからの入力を仮想ディスプレイに出力

を行ったり来たりしながらプロトタイピングを行い,最終的には

  • リアルカメラからの入力をリアルディスプレイに出力

するという形でプロトタイピングを進めることができる,というのがProcessinglueの大きな特長になっています.

https://github.com/yasutonakanishi/Processinglue

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Processinglue : Virtual Display

Processingはインタラクティブなシステムのプロトタイピングやメディアアートの制作に良く使われるJavaベースのプログラミング環境です.公式サイトでもProcessingを使った作品がたくさん紹介されています

Processingを使って作品を作るといっても,Processingが動いているパソコンをそのままポンと置くことはほとんどないと思います.カメラやセンサやモータを使ったり,プロジェクタや大きなディスプレイを使うことがほとんどです.そうした時に,コンピュータで何度も試行錯誤してから実際に展示してみると,思った通りには動かなかったり,映像の大きさや動くスピードから感じるものが画面の時とは違う…(それが良い方向に転ぶ場合ももちろんあります)という事が結構あるものです.

そこで,作品が空間に置かれた様子をシミュレーションしながらプログラミングを進められるような環境である”CityCompiler”というライブラリをこれまで作ってきました.
jMonkeyEngineというゲームエンジンの中で動く仮想のディスプレイやプロジェクタ,仮想のカメラやセンサを使って,Processingが動く様子をシミュレーションできるというものです.CityCompilerの使い方や使った例などはこちらへ.
 CityCompilerワークショップ「空間をプログラミングしよう!」向け資料
 CityCompiler Examples on vimeo

CityCompilerを使ってProcessingのシミュレーションをするにはjMonkeyEngineをちょっと理解しないといけないので,それが少しハードルになっていました.

Processing2.0がOpenGLを全面的に取り入れたこともあり,CityCompilerと同じような仮想カメラと仮想ディスプレイをProcessingで実装したのがProcessinglueです.
Glueは糊のことですが,ProcessingをProcessingにくっ付ける糊,というイメージで名前を付けました.これでProcessingをシミュレーションするのにProcessingの知識があればOKになりました.

FlatDisplay Test0 from Yasuto Nakanishi on Vimeo.

このムービーではProcessingのExamplesにあるDistance2DというPAppletを仮想ディスプレイに表示して,それをお姉さんが見ている様子をシミュレーションしています.シミュレーションを始めると,「ディスプレイを回してみるとどうかな?」「回るディスプレイにどんなProcessingを表示するとオモシロいかな?」「横長と縦長だったらどう違うかな?」なんて事を考え始めるようになります.Processinglueを使えば色々なアイデアをシミュレーションしながら発展させることができます.

仮想ディスプレイを実装するにあたってキーになるのはPAppletの
public void registerMethod(String methodName, Object target)
というメソッドです.

PAppletの中でdraw()メソッドが初めて実行される時や実行された直後,スケッチが停止したり再開した時,mouseEventやkeEvent,touchEventが起きた直後などに,呼んでもらいたいオリジナルのメソッドをPAppletに登録することが出来ます.

仮想ディスプレイは,表示するアプレットのdrawメソッドが呼ばれた直後に,いま描かれたホヤホヤのpilxels[]の中身をコピーしたPImageを作る,ということをします.
表示するアプレットが描画をする度にPImageを作り直し,そのPImageをP3Dの中にテクスチャとして表示することで,Processingが動く様子をP3Dの中で見ることができます.

テクスチャの貼り方を変えるだけで円柱型ディスプレイや曲面ディスプレイも簡単に作れます.なのでこれらは平面の仮想ディスプレイのサブクラスとして作りました.

BezierDisplaysScape

CylinderDisplays Test

マウスによるインタラクションがあるPAppletは別ウィンドウを作って表示するオプションをtrueにして,普通のPAppletと同じようにそのウィンドウをアクティブにしてマウスを動かします.
マウスの動きに応じて作り替えられたpixels[]が毎フレーム毎にコピーされてテクスチャとして貼り直されるので,マウスの動きがシミュレーションにも反映されます.↑の円柱ディスプレイのサンプルがそうした例になっています.

Processingの開発環境であるPDEは一つのフォルダにPAppletが一つだけあるという前提を置いているので,PAppletを複数使うProcessinglueはPDEでは実行できません.そのためEclipseを使って開発を行います.ソースコードを含んだプロジェクトをGitHubに上げてありますので,ぜひ一度試してみてください.

https://github.com/yasutonakanishi/Processinglue
https://github.com/yasutonakanishi/Processinglue/archive/master.zip

仮想カメラについては次のエントリーで紹介したいと思います.

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ROBOTIC PROTOTYPES IN ARCHITECTURE

DESIGN FRONTIERS WORKSHOP SERIESの2つめのワークショップ「ROBOTIC PROTOTYPES IN ARCHITECTURE」にも参加しました.
先週のワークショップもそうでしたが,参加者のバックグランドや経歴,出身国やスキルも様々です.UC Berkeleyの学生もいましたが,アメリカの高校生,建築を学ぶインドから来た学生2人,建築を学ぶ台湾から来た学生,ニューヨークのインテリアデザインの事務所で働いていた女性,パロアルトで事務所を構える建築家.普段は映像を作っているアーティストが参加していました.こうした参加者の多様性:diversityはとてもアメリカ的だと思います.

講師のJason Kelly JohnsonはFUTURE CITIES LABというデザイン事務所を主宰しつつCCAC(California College of Arts)でも教えている建築家です.
周囲の環境や人々の動きに呼応するインタラクティブな建築を作るためのプロトタイピングツールにfireflyというものがあります.センサ/アクチュエータ <-> Arduino <-> firefly <-> Grashopper(プラグイン) <-> Rhinoceros(3D CAD)と接続させることができ,3Dの形とインタラクションを素早く並行的にプロトタイプできます.
firefly
fireflyは自分が作っているCityCompilerの論文の中で参照したことがあって以前から知っていたのですが,ワークショップに申し込みをした時にはJasonがfireflyの中の人であることを知りませんでした...直前にJahonから来たメールにfireflyのレクチャーもするからインストールしてきてね!と書いてあってその事を知り,まさにconnecting dotsでとても驚きましたが,会ってみたいと思っていた人に出会えた機会となりました.

ワークショップのお題はMETABOT DRAWING MACHINESでした.”SENSE”/”PLAN”/”ACT and FEEDBACK”する絵を描くボットのアイデアを出してプロトタイプを作りました.先週は円柱型ディスプレイを備えたゴミ箱ロボット群のシミュレーションをしましたが,このワークショップでは実際に動くロボットを作りました.

初日の午後はPinterestを使って参加者各自がどんな興味を持っているかを共有しました.そして次の日までにアイデアの可能性を示す”モノ”を持ってくる,という宿題が出ました.ここで印象的だったのは「この部屋の中にあるモノだけを使ってプロトタイプの第一弾を作る」という進め方をしたことでした.
外へフィールドワークに出かけて刺激を受け頭の中でアイデアの化学反応を起した先週とは違い,身の回りにあるモノから新しい意味を見出すことで新しいアイデアを出す訳です.これは「その場で手に入るものを寄せ集め、それらを部品として何が作れるか試行錯誤しながら、最終的に新しい物を作る(Wikipediaより)」“ブリコラージュ”という方法に近いものです.

ブリコルールは既にある物を寄せ集めて物を作る人であり、創造性と機智が必要とされる。また雑多な物や情報などを集めて組み合わせ、その本来の用途とは違う用途のために使う物や情報を生み出す人である。端切れから日用品を作り出す世界各国の普通の人々から、情報システムを組み立てる技術者、その場にあるものをうまく使ってピンチを脱するフィクションや神話の登場人物まで、ブリコルールとされる人々の幅は広い。
(同じくWikipedia)

機転を効かせて危機から脱出する007やモノボケをする芸人さんのように,目の前にあるモノの本来の意味とは違う意味を見出す練習をしているとこうした発想を進め易くなります.またその練習のためには雑多なモノがたくさん置かれている場所や自然の中に出かけて,モノボケを繰り返すと良いと思います.

部屋の中にあるモノを色々と見ているうちに,サーボモータの車輪としてテープを使う事を思いつきました.おっこれは良い!と思った瞬間に,短い鉛筆たちが目に止まりました.鉛筆が車輪のスポークに見えると同時に,タイヤとリムが壊れてスポークだけになってしまった車輪ロボットのイメージが浮かび上がりました.
そして,普通の車輪ロボットの横で壊れたロボットがもがき続けていたら,周りの人々はどんな気持ちになるんだろう.そしてどんな声を掛けるのだろう..応援するのか,哀れみのような感情を抱きはするものの何も言わずに通りすぎるのか.人々の反応を絵に描き場所の違いを可視化する,そんなアイデアを発表しました.


各自がアイデアを発表した後は,近いアイデアを持った2人がペアとなってプロトタイピングを進めました.パートナーになったのはUC Berkeleyで建築の修士課程を終えたばかりのPablo.3Dプリンタでシリコンを積層する研究をしているとのこと.自然に自分が回路とArduinoとソフトウェア,Pabloがロボットのボディを作ることになりました.

木曜日の午前中はJasonのスタジオを見学しました.さすがにfireflyの中の人だけあって,3DプリンタだけでなくCNCルーターや工作機械を使ってキネティックな建築のプロトタイプをしていました.その後にCityCompilerの紹介をして,fireflyを参照した論文を見せたらとても喜んでくれました.

金曜日にはパーツも出来上がり,車輪型のDrawing Metabotとペンを松葉杖のように使うDrawing Metabotの2体を作りました.残念ながら描く絵の面白みを出すところまではたどり着くことはできませんでした…が,公共空間の中でこうしたMetabotが動くことの意味をJasonや他の参加者達とディスカッションすることができました.


動物か昆虫か人工物か:デザインによって人とロボットとのインタラクションは違ってくるよねといった話をしているうちに,建築家のAlanが小さな人形をロボットの前に置きました.その途端にロボットのスケールが変わって空間のコンテクストが大きく変わり,新しい議論が広がり始めました.

先週のワークショップが終った時も他者がコメントしたりアイデアを付け足しやすいプロトタイピングのことを考えていましたが,「物理的なモノが複数の人達の真ん中にある」ことはコメントを引き出しやすく色々な人の視点を通じてアイデアを発展させる力があります.
d.schoolにおけるデザイン思考が色々なところで紹介されていると思いますが,自分達がいる場所にあるモノを使ったブリコラージュで何かしらモノを作り,それをチームの中と外で共有することでアイデアを発展させ具体化さていく事が強調されています.
序盤に行う観察やポストイットを使ったアイデア出しも重要ですが,デザイナが行っていた思考のプロセスをエンジニアやビジネスマンがチームとしてこのプロトタイピングを繰り返す(作りながら考える*考えながら作る)ことがデザイン思考の本質ではないかと思います.
IDEOのティム・ブラウンは「自分がデザイナーだと自覚したこともない人々にデザイナーの道具を手渡し,その道具をより幅広い問題に適用するのが,デザイン思考の目的なのだ」と述べ,「直観で判断する能力・パターンで見分ける能力・機能性だけでなく感情的な価値をも持つアイデアを生み出す能力・単語や記号以外の媒体で自分自身を発信する能力を重視するのがデザイン思考だ」と述べています(『デザイン思考が世界を変える』より).

ブリコラージュ的な「プロトタイピング」は,理論や設計図に基づいて物を作る「エンジニアリング」とは違ったプロセスです.自分とPabloはスキルと知識があるペアだったと思いますが,最初からそれなりに動くものが作れてしまうだけに,dirtyなプロトタイピングをスキップしてしまった気もします.
また最初に「この部屋の中にあるモノだけを使ってプロトタイプの第一弾を作る」際には少し居心地の悪さも感じました.もう少し調べものをしたり良い素材を探しに外へ行きたい,そんなことが少し頭をよぎりました.そこをグッと我慢してあれこれとモノを見ているうちにアイデアが出てきました.それがブリコラージュの特徴でもあると思います.

ワークショップを主催する方はワークショップの過程をその人なりにイメージしてデザインしているものです.そのデザインに乗っかってプロトタイピングをすることは,自分をオープンにしながら環境や他者からの呼びかけに応じている自分の中の声に聞き耳を立てながら,見知らぬ場所へ辿り着く旅のようでもあります.
ワークショップの参加者として久しぶりにそうした感覚を味わえた2週間でした.

Many thanks to Jason and all guys in the workshop!

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EXPRESSIVE MOVEMENT IN ARCHITECTURE AND DESIGN

7月15-19日にUC Berkeleyで行われたEXPRESSIVE MOVEMENT IN ARCHITECTURE AND DESIGNというワークショップに参加してきました.DESIGN FRONTIERS WORKSHOP SERIESという4週間に渡って開催される4つのワークショップの1つめです(2つめも参加したので,それについては別エントリーで).講師をつとめるWendy JuはStanfordのdesignX Labの同僚でもあります.

Exercise 1: Defining the Space
初日はまずこのワークショップのお題に関連して参加者7人それぞれがオモシロいと思っている関連した事例などをGoogle+のページに書き込んで紹介し,お互いの関心事を共有しました.その後グループに分かれてキャンパスをフィールドワークしました.

Exercise 2: Exploring the Fantastic(Campus of Berkeley)
Wendyから出されたお題: You will be going on an imaginary scouting expedition for places:1)To put a large display, 2)That would make a good improvisational stage for showcasing people’s expressive movements,3)To build in physical movement of otherwise inanimate spaces)を頭の隅に置きながらキャンパスを2人の女性と一緒に歩き,歩きながらディスカッションをして3つのアイデアを出しました.1人ずつ1つのアイデアをプレゼンするよう作業を分担し,2日目の午前中にそのプレゼンしました.最終的にはグループで発表したアイデアとは別のアイデアを各自でプロトタイプしましたが,歩いている時に3人それぞれが一番面白がっていたことがアイデアの元になっていました.

ぶらぶらと歩いている最中に,自分の中にある興味と自分の外にある何かと組み合わさってアイデアが出ることが多々あります.街に出て人々を観察をしたり初めての場所へ出かけることは,そうした化学反応のような組み合わせを生み出すための良い方法です.デザイン思考で観察に出かけたりやアイデアキャンプで街に出かけることは,最初は何かみつかるかなぁ…と不安だったりするものですが,何かしら発想のきっかけを与えてくれるものです.

Exercise 3: Wizard of Oz
2日目の午後にはdesignX LabのDavidがビデオプロトタイピングの紹介をしてくれました.新しいHuman Computer Interactionをデザインする時にWizard of Oz(オズの魔法使い)と呼ばれる方法を使うことがあります.
これはコンピュータを使ったシステムを作る時に人がどういう反応するか?を探る時に,コンピュータが行う(べき/だろう)処理を人間が代わりに処理をしてテストをする方法です.ビデオプロトタイピングはWizard of Ozを使ってシステムを動かした様子をビデオを使って撮影し,それに対して人々からの反応を調べる方法です.
ProcessingやArduinoを使ったプロトタイピングの手法もさっと紹介されましたが,参加者のプログラミングスキルの幅が大きい場合には,モノ+(魔法使いのように)それらを操作する糸や棒とビデオを組み合わせる方法も紹介しておくのは,ワークショップの進め方として良い方法だと思います.

その後は各自が自分のアイデアをプロトタイプしていきました.キャンパス内のゴミ箱にいろいろな形のものがあること,ゴミ箱が集まっている様子が鳥の群れのように見えたこと,が自分の関心を惹きました.Wendyのお題の2)と3)を組み合わせて,ゴミ箱ロボットを群れとして動かし,それらとキャンパス内の人々がインタラクションする様子をプロトタイプしました.

ちょうどこの数カ月,自分が開発しているプロトタイピングツールCityCompilerの中に実機のAPIと同じAPIで動く仮想のARDroneやArduinoベースの車輪ロボットを作っていたので,CityCompilerを使って群ロボットのシミュレーションをしました.
CityCompilerの良いところして,ネット上で公開されているProcessingのさまざまなサンプルとSketchUpで作られ3Dギャラリーで公開されている3Dモデルをそのまま使えることです.プログラミングしたのは実質的には3日ぐらいでしたが,動きのパターンやゴミ箱の形を何通りかスタディすることが出来ました.その過程はこちらのスライドで.

ゴミ箱ロボットの形状を幾つか検討している内に,角柱もしくは円柱であれば良いのだと思い,円柱形のディスプレイにProcessingを表示するMobility Deviceとしてロボットを作りました.これはWendyが設定したExcersice2の2)と3)の要素に加えて1)も統合してみよう,と思ったのです.
Workshopをデザインする時には参加者の発想の取っ掛かりとなるような制約を設けます.主催側もWorkshopの流れやそうした制約を色々と考えているものなので,あえてその流れにきちんと乗っかってみることで,自分の思考のバイアス:偏りから逃れることができます.それはサッカーで例えると,自分1人でドリブルで切り込むのではなく,味方とパスを交換し続けながらゴールに迫るようなものかもしれません.

最終日の午後2時からミニパーティー形式で参加者全員が作ったプロトタイプの発表を行いました.実物+糸+Arduinoでのデモ,模型+遠近法をうまく使って敷地で動かしているように見せたビデオ,など,さまざまな進め方のプロトタイピングがありました.
自分が進めたシミュレーションとしてのプロトタイピングは,スピードが早く複数のバリエーションの比較も簡単にできるメリットがある一方で,他の人からは今何を進めているのかが見えづらくある程度出来上がった時でないとアイデアを足してもらったりコメントをもらいにくいというデメリットがあります.
他の参加者と同じ部屋でプロトタイピングをしていましたが,他の参加者に助けを求めることで新しいアイデアを引き出した人もいたりして,最後の発表会でもそうした違いを感じました.

参加者どうしのインタラクションを含めプロトタイピングの場をどうデザインするか?
ワークショップの主催者ではなく参加者としてするのは久しぶりでしたが,そうした問題を改めて考える良い機会になりました.

Many thanks to Wendy and all guys in the workshop!

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未完成の場で創造を繰り返す

d.schoolの「場」がどのようにデザインされているのかを記した書籍「MAKE SPACE」.

その日本語版が作られた際に監修をしたイトーキの方々が先月スタンフォードに来られ,著者のスコット・ドーリー自らがd.schoolを案内する機会に同行させていただきました.

d.schoolに置かれている家具はd.schoolのスタッフによってデザインされています.Scottの話の中で印象的だったのは,建材として使われるシャワーボードと洋服売り場で使われるハンガーラックを組み合わせて作ったホワイトボード:Z-rackと,合板を天板にしたテーブル:Periodic tableの説明を受けた時でした.

普通のホワイトボードは脚の部分がH型になっていて,幾つも重ねて置いておくことはできません.Z-rackはたくさん重ねて収納できますし,とても頑丈に出来ているので荒っぽく扱っても問題ありません.乱暴に扱って見せるから動画撮ってね!とスコットがデモしてくれました.
d.schoolの教室の中心的な役割を果たすPreodic tableはスペースの躍動感を示す大きな存在です.Periodic tableはハイチェアと合う高さになっていて,並べ方を変えて幾つか直線に並べれば立食パーティもできるし,L型にするとプレゼン会場のようになります.大きなキャスターと正方形の天板は「どんどん移動させて使って」というメッセージを発しています.そして「日常的に使われ,いじられることを想定している」ため,最初に作る時から天板にわざとキズを付けることもあるそうです.

これらは家具メーカーであるイトーキの皆さんには少し驚きだったようでした.メーカーが乱暴に扱って大丈夫だよとメッセージを発したり,最初からキズを付けて製品を出荷するというのは,不良品やクレームをなくそうと日々努力されているサプライヤーには無い発想でしょう.

Designのための環境を自分達でDesignし続けてきたノウハウが詰まった本がmake spaceです.今のd.schoolは引越しを重ねた4つめのスペースですが「User Centered DesignをするためのスペースがUser Centered Designされてきた」ことが非常に重要なことだと思いました.

David Kellyによる序文は「気付いていないかもしれないが,私たちは「どのように働くべきか」について空間が発するメッセージを受け取り,それに従っている.」と始まり,そしてd.schoolのスペースは「あなたもどんどん参加して」とメッセージを発すると述べています.

d.schoolは木造の建物が鉄骨で補強されていますが,その太い木の梁とパイプ剥き出しの高い天井が,こうしたセルフビルドの家具にとてもマッチしています.鉄とガラスで出来たビルには少し似合わないかもしれません.
ドイツのHasso Plattner Institueでd.schoolのスペースをデザインした際の話がワークプレイスやワークスタイルに関するサイトworksight.jpに掲載されています.
「技術を魅力的なソリューションに導く デザイン・シンキングとは」
こちらの一節が非常に印象的です.

空間が未完成だからこそ人は考える
イノベーションの場は、完璧であってはいけない。磨きをかける余地や、提案をする余地がなければいけない。ガレージのように、ある意味、未完成で、「あれをこっちに動かしたい」「これを少しずらしたい」と思うような場であるからこそ、頭が回転するからです。素材も光沢のあるものよりも、磨いていく部分があるもののほうがいい。その場に立って見回すと「やることがいっぱいある」と思わせるような場が理想なのです。その点、完成している場は、「下手にいじってバランスを崩したくない」「汚したくない」と思わせてしまい、そこに立つ人の足をすくませてしまいます。仕事をしていて「ここに何か書いたら怒られるかな……」などと考えてしまうようでは、活動が萎縮してしまいます。

最近何かの時に目にした「失敗できる場所で失敗する」というブログも関係がありそうです.

worksight.jpでもd.schoolが紹介されていますので,ぜひ合わせて読んでみてください.
「デザイン思考を実践できるイノベーターが育つ」

ツアーの最後にはd.schoolのブレインストーミングのスタイル”Yes AND”が書かれたバッグをお土産にもらいました.頭では分かっているつもりでしたが,Scottとのツアーでよりd.schoolへの理解が深まりました.
Many Thanks, Scott!

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創造的思考過程のモデル化

Stanford d.schoolにおいてはデザイン思考は5つのステップ:EMPHATHIZE(共感),DEFINE(問題定義),IDEATE(創造),PROTOTYPE(プロトタイプ),TEST(テスト)として説明されています.それぞれのステップの詳細とプロセス全体を進めるにあたっての心構えについてはDesign Thinking – Bootcampのサイトが分かりやすいでしょう.

人気を博しているデザインシンキングですが,この5つのプロセスを順番に進めるだけでイノベーションが生まれるのか?という疑問が湧くのは自然なことでしょう.

先日d.schoolで教鞭を取るティナ・シーリグとミーティングをする機会がありましたが,彼女はこのモデルとは少し違うかたちで創造のプロセスを捉えているようでした.

d.schoolを運営する資金を提供しているHasso Plattnerが描くデザインシンキングのダイアグラムではステップが6つあり,また相互のステップが行き来していて少し複雑です.

創造の過程を説明するモデルには大きく分けると
 a)ステップ間の行き来が描かれない直線的なモデル
 b)ステップ間の行き来が描かれた反復的なモデル
があります.
前者としては,ジェームズ・ヤングによる書籍「アイデアのつくり方」や,建築家・藤村龍至さんによる意識的に直線的な設計を行う「超線形設計プロセス」(「ジャンプしない」「枝分かれしない」「後戻りしない」という三つの原則に基づく)があります.

物理現象をモデル化:式として表現する方法にニュートン力学と量子力学がありますが,それらは対象とする物理現象のスケールによって使い分けられます.創造の過程のモデルの関係はどう説明できるのでしょうか?

直線的なモデルと反復的なモデルの関係を図として表現した研究に 平石徳己, 創造的思考プロセスの幾何学的モデル化, 日本創造学会論文誌, Vol 2, pp.50-61, 1998.があります.Webではこの図が見つからなかったので,この図を知った弓野憲一「世界の創造性教育」ナカニシヤ出版のp.17の図1.1 創造的思考プロセスの幾何学的モデル(平石1988)を模写しました.

この図のパスM-Nは難易度が低かったりきちんと正解があるwell-defined problemであったりとスムースに問題解決ができるケースを示しています.
問題の難易度が上がり,問題の定義が曖昧だったり矛盾を含んだり解が複数存在するようなill-defined problemになるにつれて,パスP-A-B-C-D-E-Qという創造的なアウトプットに至る「典型的な創造的思考プロセス」が必要になります(この図ではそれとしてワラスの四段階説:準備期+あたため期+ひらめき期+検証期がとりあげられています).
しかし実際には,一連のステップが1回ずつだけ行われるとは限らず,一番最初に戻ってしまうパスE-F-G-H-Aもあれば,新しいアイデアを考えなおすE-F-G-Cというパスもありえます.

モデル化された思考プロセスは,あくまでも説明しやすいようにモデル化=理想化/単純化したものです.この図を知っていれば,直線的なモデルと反復的なモデルの関係を把握しやすくなると思います.

デザインシンキングや創造的思考プロセスに関心を持つ人が増えるにつれて,さまざまな思考プロセスのモデル化がこれからも行われていくことでしょう.異なるモデルを比較してみると,提案者のモデル化の意図や伝えたい事がどこにあるか?を知ることができるでしょう.

創造思考の過程をモデル化する=単純化する動機には,
 1)創造性教育における基本の「型」として活用+体で覚えるまで練習を繰り返す
 2)複数の人々がチームプレーをするための「共通言語」として活用する
 3)早く/上手に/失敗なくアイデアを生み出す「方法論」として活用する
など幾つかあります.
「デザイン思考」への違和感を感じている人も増えつつあるのではないかと思いますが,それは3)としてデザイン思考を捉える人が増えているかもしれません.個人的には,dschoolでは1)と2)にフォーカスが置かれているように思います.

またそうした違いを図示できるとオモシロいのではないか,とふと思いました.

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