Processing Library TemplateでProcessinglueを更新

インスタレーションやデジタルサイネージ等のように、大型ディスプレイや空間的に配置した複数のディスプレイでインタラクティブなシステムを動かすシミュレーションができるよう、3Dの仮想空間の中でProcessingを表示できる仮想ディスプレイとその仮想空間を撮影する仮想カメラを実装してきました。
 その発端とも言えるCityCompilerは仮想空間はjMonkeyEngineを使いましたが、3D仮想空間もProcessingにしたのがProcessinglueです。
[CityCompiler Examples on Vimeo]

以前からソースコードはgithubで公開していたのですが、Processing2.xではデバッグがしづらくいつもEclipseでProcessingを使っていたこともあり、Eclipseで使うプロジェクトとして公開していました。
 Processingがヴァージョンアップしてデバッグが出来るようになり使い勝手も上がったので、Processingのライブラリとしてインポートしやすいよう、Processinglueをビルドし直しました。
[https://github.com/yasutonakanishi/Processinglue]

ビルドにはProcessingのLibrary Templateを使いました。
[https://github.com/processing/processing-library-template]
使い方は英語で書いてあるとおりですが、日本語で解説されたサイトがなかったので、参考程度に手順をメモしておきます。
 Eclipseへのインポートの仕方はOption Bでやりました。ダウンロードしたzipファイルを解凍せずにEclipseのプロジェクトにインポートします。EclipseでProcessingを使えるようにすべく、core.jar等の必要なライブラリを追加します(この作業は、こちらなどを参考にしてください)。仮想カメラはCaptureクラスのサブクラスとして実装しているので、Videoライブラリのjarも3つ追加します。build.propertiesを自分のライブラリ用に設定し、サンプルとして付いてくるHelloLibrary.javaをAntでビルド出来て、そのライブラリを使うHello.pdeを実行できれば、準備完了です。あとは、自分のライブラリのためのコードとそのサンプルを追加していきます。参考までに、Eclipseのプロジェクトの画面をのせました。


PglueLibraryTemplate

サンプルは2つ作りました。一つ目は、Processingを仮想ディスプレイに表示して、スケール感が分かるようにそれを眺めるC3-POを置きました。ディスプレイの大きさや位置をcontrolP5で変えながら、コンテンツのProcessingをプロトタイピングしてゆくような例になっています。二つ目は、飛んでいるアイアンマンを眺めているC3-POを仮想カメラで撮影しその画像を背後の仮想ディスプレイに表示、というのを作りました。仮想空間の中でもビデオフィードバックが起きています。

Stanford滞在記

2013/3から2014/3まで、StanfordのCDRにVisiting Scholarとして滞在しました。同時期にStanfordに滞在した人達の文章をまとめて出版しましょう、という企画がCDRの同僚だった近畿大学の廣田さんから持ち上がっていました。この企画、諸般の事情でまだ進行中なのですが、帰国してもう2年が経ってしまったこともあり、まずはこちらのサイトで自分の原稿だけ公開させてもらうことにしました。

このサイトの他のエントリーを編集したような内容になっていて、写真をそれらで見つつ合わせてお読みいただくとイメージが湧きやすいと思います。

2012-2013 ME101: Visual Thinking
Teamwork for Radical Collaboration at d.school
50 years in the Making
スポーツと働き方とお国柄
2013-2014 Winter semester (1) ME115B
2013-2014 winter semester (4) EE92A

[pdf-embedder url=”http://unitedfield.net/wordpress/wp-content/uploads/2016/03/atStanford_YasutoNakanishi.pdf”]

スマートライフハッカソン+iGeoワークショップ

12月に二つのハッカソン・ワークショップのお手伝いをしました。

ひとつ目は、研究室OBである竹中工務店の粕谷貴司君が主催しているスマートライフハッカソンです。
 電気や照明、音響やスマート家電などのビルの設備を制御するAPIをUnityで作ったプログラムから制御できる「ビルコミ3D」というライブラリを使ったハッカソンです。
Unityに3Dモデルを読み込んでそこに配置したオブジェクトを制御すると、実際のビルの中のオブジェクトも制御されるように作られています。東大のグリーンICTプロジェクトのサポートによって弥生キャンパスのI-REF棟をプラットフォームとすることで、作ったプログラムが実際の空間の中で動くかを検証しながらハッカソンを進めていきます。
 第1回から審査委員長を中西が務めさせていただいていて、12/12・13に第3回が開催されました。そのままオフィスで運用できそうな機能的なシステムから、オフィスをゲームの舞台にしてしまうシステムまで、広がりのアイデアが提案され実装されていました。
 今時の言葉で言えばIoTやスマートスペース、少し前のキーワードであればユビキタスコンピューティングやCyber-Physical Systemの開発をゲームエンジンで行うという枠組みは、中西研でずっと研究してきたCityCompilerと同じ枠組みです。ビルコミ3Dではそれが実際のビルを対象として、機能的なビルとその中のアクティビティをデザインし開発できるようになりました。研究として行っていたようなことが、社会の中に出て行こうとしている様子を見ることができ、感慨深くもあります。

smartlife-hackathon

ふたつ目は、LA在住のコンピューテーショナル・デザイナー杉原聡さんが開発したProcessingと建築用ライブラリiGeoのワークショップです。
 Processing:ビジュアルデザイナーとアーティストのためのプログラミング入門
を日本語化するにあたって日本人クリエイター4人へのインタビューを追加しましたが、杉原さんはその原稿をお願いしたお一人です。東工大でComputer Scienceを専攻し、かつてジョン・前田も在籍した国際メディア財団でメディアアート作品などを作っていた杉原さんは、一念発起してUCLAで建築を学び、Morphosisで実務を経験し、コンピューテーショナルデザインによってさまざまなビルのファサードを実作されている先端的な建築家です(現在はご自身の設計事務所ATLVを主宰)。

 そして、ご自身がファサードのデザインを実践するために作ったライブラリを惜しげもなくオープンソースで公開しているのがiGeoです。
[iGeo]
 杉原さんが年末に日本に戻られるということで、iGeoのワークショップを初めて日本で開催しました。ワークショップには建築の実務に携わっている方、建築を学んでいる学生、グラフィックデザインやプロダクトデザインの実務に関わっている方など30名ほどの方が参加されました。開催場所はグローバルに活動されているデザインコンサルティングファームziba tokyoのオフィスのオープンスペースを提供していただきました。

 中西は運営の手伝いをしながら、iGeoを使ってエージェントベースのコンピューテーショナルデザインを実際にプログラミングしました。エージェントを使った形態生成では、自分でアルゴリズムを組んで形態を生成する以上に、自分の想像を超えたモノが立ち現れます。自分が制御できる部分と自分では制御できない部分のせめぎ合いを楽しみながら、自分のコントロールを捨て去ったところに新しい形態が現象する感覚を味わうことができました。
 そうした感覚を短いコードですぐに体験できるのがiGeoの素晴らしいところです。杉原さんが講師を務めているSci-Arcという大学では14回の講義をかける内容を超高速で2日間進めたにもかかわらず、参加者のみなさん全員がコンピューテーショナルデザインを実践しておられました。とても濃密なワークショップでした。

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 アメリカやヨーロッパの大学では開催されていましたが、このタイミングに合わせてドキュメントも日本語化されました。多くのユーザの方にiGeoを使ったコンピューテーショナルデザインを体験してもらいたいと思います。
[iGeo 日本語チュートリアル]

スマートライフハッカソンならびにiGeoワークショップに参加いただいた皆さん、場所を提供いただいたziba tokyoの皆さま、どうもありがとうございました!

ORF2015

11月の20(金)から21(土)まで六本木ミッドタウンを中心に慶應義塾大学Open Research Forumが開催されました。

2年生を中心にしたグループワークでORFに向けて一ヶ月でプロトタイピングした二つのシステムを展示して色々な方にコメントをいただきつつ、

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これまでに進めてきた研究プロジェクト
・DreamDate
・BabyBumper
・FaceShadowing(Futuroid#1)
・TracePlayer(Futuroid#2)
はポスターでその内容をご説明しました。

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さらに、小説家の平野啓一郎さんにお出でいただき「分人主義とFuturoid」というテーマで、トークセッションを開催しました。インターネットやSNSなど新たな空間を作り出すコミュニケーション技術の発達と普及によって、近代の基盤となっている”個人”という概念がゆらぎつつある中で、新しい生き方としての「分人」と新しい自分を作り出すための技術である「Futuroid」の関連について語り合いました。分人主義について知りたい場合はこちらがおススメです。
私とは何か――「個人」から「分人」へ (講談社現代新書)

ご来場いただきブースやトークセッションに足を運んでいただいた皆様、どうもありがとうございました。

Processingのバイブル、日本語化

監訳を担当しました「Processing:ビジュアルデザイナーとアーティストのためのプログラミング入門」が出版されました。値段は少し高いですが、、凡そ670ページにも渡る素晴らしい内容の本です。

プログラミングの入門書としてだけでなく、CGやメディアアート、インタフェースの歴史、一線のクリエイター達のインタビューが散りばめられていることが、本書の大きな価値だと思います。Processingという道具を使って何を作るか?自分自身でProcessingをどう拡張していけるのか?プログラミングをするとはどういうことか?について、自分の考えを深めるきっかけとなることでしょう。



多くの皆さんに読んでもらえることを願っています!

BabyBumper @ Ubicomp2015

学部生4人でプロトタイプを繰り返した”BabyBumper”を国際会議ACM Ubicomp2015でポスター発表してきました。日本の都市部の交通機関は他の国々よりも特に混雑していて、妊婦さんにはハードな状況であることから、お腹の中の赤ちゃんのためのエアバッグを試作しました。色々な方に面白くかつ役に立つアイデアだと言っていただけました。

論文と紹介ビデオはこちらから。
[BabyBumper: protector/communication wearable device for pregnant women, in ACM digital library]

セレンディピティ

イギリス人のウォルポール伯爵が創り出した「セレンディピティ」という言葉は,「偶然と才気(すぐれた頭のはたらき)によって,さがしていなかったものを発見する」ことを意味しています.
自分が作ってきたシステムや作品を説明する時にセレンディピティについてよく言及しますが,もともとが造語であることもあって辞書によって定義が違うこともあるようです.

幾つかの書籍を読んで,いちばんクリアな説明と思ったのは,
セレンディップの三人の王子たち―ペルシアのおとぎ話 (偕成社文庫)
の訳者である竹内 慶夫さんの解説にあった以下の内容でした.

「セレンディピティ」を明確に定義づける三つの重要な要素を見いだすことができます。それは、(一)偶然と(二)才気によって(三)さがしていないものを発見すること、です.ここに、セレンディピティということばの意味を考える原点があります。
(中略)
科学技術の発見には、このような場合がひじょうに多く、ペニシリンが抗生物質をさがしていた研究者によって、偶然がきっかけで発見されたのは、その代表的な例です。
セレンディピティ的発見の鍵は、偶然を生かすことができるかどうかで、それは実験や観察をする人たちの心がまえしだいです。なにごとかに集中する意識があって、周囲のできごとを注意ぶかく観察し、それに瞬間的に無心に反応する心がつねにそなわっていることが必要です。先入観は禁物です。これがセレンディピティ的発見の必要条件とすれば、気づいた偶然を解析する能力と根性をもっていることが十分条件といえるでしょう。
いままでの例にあげたように、セレンディピティは科学の分野のみで注目されているかのような印象を受けます。しかし,そもそもウォルポールの手紙にみられるように、彼が「セレンディピティ」の定義に使った例は、ラクダの話にしても、シャフツベリ卿の話にしても、これに似た例はわれわれの日常生活におこりうることなのです。
このことは、心がまえひとつで、私たちも日常生活のなかでセレンディピティに遭遇しても不思議ではないことを意味しています。自分をみがき、いま述べたセレンディピティ的発見の必要条件にかなった性格さえ身につければ、だれでもセレンディピティを体験できるはずです。

(太字はこのエントリー投稿者による)

セレンディピティを定義づける要素は三つあり,そしてセレンディピティ的発見には必要条件と十分条件の両方がある,という説明は竹内慶夫さんが鉱物学者であったこともあり,とても明確ですね.セレンディピティ的発見をした後には解析する能力と根性を持っていないといけない,という辺りは,金出先生の「素人のように考え、玄人として実行する」にも通じるでしょう.

様々なエピソードを持って語られる「セレンディピティ」ですが,三つの要素と二つの条件によって,それぞれのエピソードを比較することが出来そうです.

Processing 2nd Edition 日本語版

Processingとそのコミュニティを生み出したProcessingの中の人達Casey REASとBen FRYによるProcessing: A Programming Handbook for Visual Designers and Artistsの第2版が12/26に出版されます.



CityCompilerとProcessinglueをCaseyにデモした縁から,その日本語版の出版プロジェクトを進めることになりました.中西は監訳+訳,安藤幸央さん,澤村正樹さん,杉本達應さんの訳,出版社はBNNというチーム体制です.6月か7月頃に刊行予定です.

第1版は日本語版が出ていないので,Processingのバイブルとも言えるこの本の日本語版は日本のCreative Codingコミュニティに貢献できると考えています.乞うご期待!

WISS2014@浜松

ヒューマンインタフェース,インタラクションデザインの研究者達が全国から集まって合宿形式で研究発表と議論を行うWISSでポスター発表を2件してきました.

なんと発表された研究の論文や動画,さらには査読コメントまでが公開されるという先進的なスタイルをとっています.
[WISS2014 プロシーディングス]

自分達が発表した内容の論文のリンクをはっておきました.

2A-03 Generating Intermediate Face between a Learner and a Teacher in Learning Second Language with Shadowing
中西 陽子(Independent researcher),中西 泰人(慶大)

2A-04 床面に表記された身体動作の記録を再生するロボットの基礎的検討
中西 泰人(慶大)

最初にWISSに参加したのは1999だったと思いますが,前々回の青森での参加から2年ぶりの参加となりました.次回のWISS2015は別府で開催とのことです.

ORF2014

11月の17(月)から22(土)まで六本木ミッドタウンを中心に慶應義塾大学Open Research Forumが開催されました.

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今期から入った6人の学生がそれぞれの個人研究とは別にORFに向けて共同で進めた新しい研究を紹介しました.私たちはコンピューターと人間との今後の関わり合いを考えるにあたり,”インタラクションとインテリジェンス”をテーマに,比較的パーソナルな機械であるデスクトップ扇風機を取り上げ,4種類の人と扇風機のあり方をデザインし,来場者の方々からご意見を貰いました.

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また中西が進めている3つの研究分野から6つのプロジェクトを紹介しました.
Creative Coding
– CityCompiler
– Processinglue
Digital Sports
– Parallel Prototyping of Digital Sports
– TracePlayer
Between Bodies
– RAM+Motioner
– Intermediate Face

ご来場いただいた皆さん,どうもありがとうございました.発表時に使ったポスターのPDFを置きましたので,どうぞご笑覧ください.