12月に二つのハッカソン・ワークショップのお手伝いをしました。
ひとつ目は、研究室OBである竹中工務店の粕谷貴司君が主催しているスマートライフハッカソンです。
電気や照明、音響やスマート家電などのビルの設備を制御するAPIをUnityで作ったプログラムから制御できる「ビルコミ3D」というライブラリを使ったハッカソンです。
Unityに3Dモデルを読み込んでそこに配置したオブジェクトを制御すると、実際のビルの中のオブジェクトも制御されるように作られています。東大のグリーンICTプロジェクトのサポートによって弥生キャンパスのI-REF棟をプラットフォームとすることで、作ったプログラムが実際の空間の中で動くかを検証しながらハッカソンを進めていきます。
第1回から審査委員長を中西が務めさせていただいていて、12/12・13に第3回が開催されました。そのままオフィスで運用できそうな機能的なシステムから、オフィスをゲームの舞台にしてしまうシステムまで、広がりのアイデアが提案され実装されていました。
今時の言葉で言えばIoTやスマートスペース、少し前のキーワードであればユビキタスコンピューティングやCyber-Physical Systemの開発をゲームエンジンで行うという枠組みは、中西研でずっと研究してきたCityCompilerと同じ枠組みです。ビルコミ3Dではそれが実際のビルを対象として、機能的なビルとその中のアクティビティをデザインし開発できるようになりました。研究として行っていたようなことが、社会の中に出て行こうとしている様子を見ることができ、感慨深くもあります。
ふたつ目は、LA在住のコンピューテーショナル・デザイナー杉原聡さんが開発したProcessingと建築用ライブラリiGeoのワークショップです。
Processing:ビジュアルデザイナーとアーティストのためのプログラミング入門
を日本語化するにあたって日本人クリエイター4人へのインタビューを追加しましたが、杉原さんはその原稿をお願いしたお一人です。東工大でComputer Scienceを専攻し、かつてジョン・前田も在籍した国際メディア財団でメディアアート作品などを作っていた杉原さんは、一念発起してUCLAで建築を学び、Morphosisで実務を経験し、コンピューテーショナルデザインによってさまざまなビルのファサードを実作されている先端的な建築家です(現在はご自身の設計事務所ATLVを主宰)。
そして、ご自身がファサードのデザインを実践するために作ったライブラリを惜しげもなくオープンソースで公開しているのがiGeoです。
[iGeo]
杉原さんが年末に日本に戻られるということで、iGeoのワークショップを初めて日本で開催しました。ワークショップには建築の実務に携わっている方、建築を学んでいる学生、グラフィックデザインやプロダクトデザインの実務に関わっている方など30名ほどの方が参加されました。開催場所はグローバルに活動されているデザインコンサルティングファームziba tokyoのオフィスのオープンスペースを提供していただきました。
中西は運営の手伝いをしながら、iGeoを使ってエージェントベースのコンピューテーショナルデザインを実際にプログラミングしました。エージェントを使った形態生成では、自分でアルゴリズムを組んで形態を生成する以上に、自分の想像を超えたモノが立ち現れます。自分が制御できる部分と自分では制御できない部分のせめぎ合いを楽しみながら、自分のコントロールを捨て去ったところに新しい形態が現象する感覚を味わうことができました。
そうした感覚を短いコードですぐに体験できるのがiGeoの素晴らしいところです。杉原さんが講師を務めているSci-Arcという大学では14回の講義をかける内容を超高速で2日間進めたにもかかわらず、参加者のみなさん全員がコンピューテーショナルデザインを実践しておられました。とても濃密なワークショップでした。
アメリカやヨーロッパの大学では開催されていましたが、このタイミングに合わせてドキュメントも日本語化されました。多くのユーザの方にiGeoを使ったコンピューテーショナルデザインを体験してもらいたいと思います。
[iGeo 日本語チュートリアル]
スマートライフハッカソンならびにiGeoワークショップに参加いただいた皆さん、場所を提供いただいたziba tokyoの皆さま、どうもありがとうございました!