ME101: Visual Thinkingでも「Design is Team Sports!!」と言われていた話を先のエントリーで紹介しました。
工業製品をたくさん作って世の中に売り出すためには、デザイナだけでなくエンジニア、マーケター、製造現場、販売現場等多くの知識を集結させる必要があるため、チームワークを身に付けることプロダクトデザイナはにとって重要です。
しかしながら、専門性の持ち方と働き方の違いからか(アメリカでの働き方は主にポジション性で、何かしらの専門知識を持つスペシャリストがチームを組んで仕事をします)、日本人が思うチームワークとアメリカ人が思うチームワークには違いがあるように思います。
そうした違いに言及している本にスタンフォードでコンサルティングプロフェッサーをされている福田収一先生の
デザイン工学
があります。以下に一部を引用します。
—– 戦術的チームワーキングと戦略的チームワーキング p.45
日本のチームワークは、既に決まったメンバーが、いかに目標を効率的に達成するかを問題にする。すなわち、いかに御神輿を上手に担ぐかを問題とする戦術的なチームワークである。目標が決まった後に、それをいかに上手に実現するかに主眼をおいている。
アメリカのチームワークは日本とまったく異なる。何をすればよいかの目標を決定するためにチームを編成する。戦略目標が決定されれば、後の戦術的な展開は個々のメンバーにまかされる。どのような方法で、目標を実現するかは、個々のメンバーの考え方次第である。
戦略目標の適切な決定には、異なる専門知識、経験の組み合わせだけではなく、異なった見方、感じ方の組み合わせが必要になる。同じ専門知識でも、個性により捉え方は異なる。専門知識、経験だけではなく、個性という要素も考えることにより、できるだけ多様性を確保し、それにより戦略目標設定をより適切に行う。それが、Stanfordが提唱するチームワーキングである。
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日本とアメリカの違いさらにはMITとStanfordでのチームワークの違いについて福田先生が言及されている発表資料もネットで見ることができました。
d.schoolは、こうした異なる専門知識を持つ学生達がチームを組んで正解のない問題にアタックすることで自分の知識を横に伸ばす機会を提供し、I型人間をT型人間に進化させるミッシングリンクだとCDRのLarry Leiferが言っていました。
特定の専門知識を持つI型人間を幅広い知識やスキルを持つT型人間に進化させることはとても難しいことです。それは万国共通なようで、その進化の方法に言及されている書籍に
アイデア・ハンター―ひらめきや才能に頼らない発想力の鍛え方
(原題 The Idea Hunter: How to Find the Best Ideas and Make them Happen)
があります。以下に一部を引用します。
—–I型人間とT型人間 p.101
専門特化した世界の外に踏み出す方法は二つあり、いずれも方向性は似ている。一つはもちろん、多少なりともゼネラリストになることだ。(略)二つめも同じくらい有効な方法で、自分の専門分野をしっかり守りつつ、分野外の人たちとのパイプを太くするように努力することだ。(略)いずれの方法をとるにせよ、あなたの視野は広がり、ほかの人にはない情報源からアイデアが得られるようになる。こうしたT型の人間になっていくのだ。必要なのは、これまでとまったく違う、なじみのな知識や習慣のあふれる世界へ、つまり”安全地帯”の外へ飛び出す意欲だけだ。わくわくするようなアイデアはそこにある。
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d.schoolがどこの専門分野にも属さない場所としてこのダイアグラムに描かれているのは「安全地帯の外」であることを示しているのだと思います。1人だけ安全地帯の中にいるのでは戦略的チームたりえませんから、アタックする問題の設定としては誰からも距離の遠い問題を選ぶ必要がありましょう。
未知の世界で何をすべきかを決定するための戦略的チームワーキング。そのために必要なMind Setsを身に付けた人材を育成する場所がd.schoolだと言えます。戦術的チームワーキングに慣れてしまっている場合は、ワークショップをやってみたり家具を揃えたりするだけでなく、まずはチームワークの違いにも注意を向ける必要がありそうです。
そうした違いの参考になる書籍として
も参考になると思います。
ピンバック: Stanford滞在記 | 慶應義塾大学 中西泰人研究室